不妊治療コラムCOLUMN

保健医療と併用できる先進医療について

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2024.08.20

不妊治療が保険適用になったことで、一部の費用負担のみで不妊治療を受けることが可能となりましたが、一方で、保険適用外の診療(自由診療)は、自己負担100%で治療を受けなければなりません。

さらに、保険診療と自費診療の併用は基本的に認められておらず、併用する場合も自己負担率が100%となっていまします。

ただし、例外的に先進医療として厚生労働省が認めた医療技術に限り、保険診療との併用が可能です。今回のコラムでは、当クリニックで行っている先進医療についてご説明します。

保険適用+先進医療の場合の費用負担

先進医療以外の自由診療を保険適用の治療と組み合わせて使う場合は、混合診療となり、保険適用の治療についても、すべてが自己負担となってしまいます。
一方、先進医療を保険適用の治療と組み合わせて使うと、保険治療の自己負担額が抑えられ、先進的な治療と保険治療をうまく併用することができます。

当クリニックで行っている、主な先進医療についてご紹介します。

タイムラプスシステム

胚を培養する際、従来は培養士が培養器の中の胚を取り出し、3〜5回程度の観察や検査を実施していました。
培養器の外に出した胚は、温度、酸素、二酸化炭素、窒素などの条件が全く異なる環境にさらされるため、大変大きなストレスがかかります。
そのため、従来の手法での観察時間は、できる限り短時間に抑える必要がありました。このような状況を解決する方法として開発されたのがタイムラプスシステムです。

タイムラプスシステムは、カメラと顕微鏡を備えた培養器の中で、胚の画像を一定間隔で撮影し、それらをつなぎ合わせて、動画のようにする技術です。タイムラプスを使用することで、胚を培養器外に取り出すことなく、連続した胚観察が可能となります。
胚の発生において、これまで観察することのできなかった受精から胚盤胞発生までの動きが、胚に負担をかけることなく行うことができるようになります。
タイムラプスによる胚発生の観察は、妊娠しやすい胚を選択するための重要な情報となります。

タイムラプスシステムのメリット

●培養環境を向上させることができる。
●胚の成長を継続的に観察できることで、異常な分割や胚を見逃さない。
●妊娠の可能性により高い胚を識別することができる。

子宮内膜刺激術(SEET法)

自然妊娠において、受精卵は分割しながら子宮へと向かい、やがて着床します。この着床を助けるために、胚盤胞からはシグナルが分泌されていることが分かっており、胚盤胞が子宮へとシグナルを送ることで着床しやすい環境が整えられると考えられています。

体外受精では、体外で受精卵が胚盤胞になるまで育てるため、このシグナルを子宮が受け取ることができません。SEET法(Stimulation of Endometrium Embryo Transfer:子宮内膜刺激胚移植)は、体内の環境を自然妊娠に近づけるため、胚盤胞になるまで育てていた培養液を凍結保存し、胚移植の2〜3日前に融解し、子宮内に注入する方法です。

培養液に含まれる胚由来因子により、子宮内膜が刺激を受け、受精卵の着床に適した環境を作り出すことができるといわれており、妊娠率の向上が期待できる方法です。

SEET法のメリット

●培養液のみを体内に入れるため、多胎になりにくい
●自然妊娠と同じように着床しやすい環境を作り出し、妊娠率の向上が期待できる。

先進医療は、高度な治療を受けられ、費用も抑えられる点などがメリットといえます。また、先進医療は、国が有効性・安全性を認めている治療方法です。不妊症状に対して有効であり、安全性も高いため、安心して治療に専念することができます。

先進医療について興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。